複式簿記からのヒント
複式簿記は,必要に迫られて勉強したという方が多いのではないでしょうか.私もその一人です.使い始めの頃は,貸し方と借り方の二つ領域があり, それぞれに勘定科目をつけていくことが面倒かつ分かりにくい感じがしました.
それでも使い続けているうちに,「取引がどういう価値の交換であったのかを簡潔に分類・記 録しておく方法である」と思えるようになりました.そうすると,とてもすっきりした気持ちになります.ベニスの商人の時代から使われているだけあって,非 常に優れたシステムなのです.
そうこうしているうちに,この複式簿記からとても良いヒントをもらうことになりました.それ は,お年寄りの貴重品預かり方法です.なにかと物騒な世の中ですので,貴重品を信頼できる誰かに預けることも多いでしょう.しかし,ただ預けるだけでは, 「預けたこと自体を忘れて家中を探し回る」といった事態になりかねません.そこで,以下の方法を考えました.
郵貯の通帳を「預ける・預か る」場合を想定します(複式簿記記述).最初に通帳を預かるときに,その通帳の表紙をコピーして,厚紙を張っておきます.通帳のショートカットアイコンの ようなものです.通帳のアバターとも言えるでしょう.通帳を預かると同時に,そのアバターを持っていってもらいます.通帳を「預ける・預かる」状態は,以 下のように,
「預け側:アバター / 預かり側:通帳」
となります.

次に,通帳を戻します.この時のルールは
「アバターと通帳を交換する」
です.通帳を持っていくには,アバターを持ってこなくてはいけません.預かり側は,通帳を返し,今度はアバターを保管します.

通帳を「預ける・預かる」場合も,通帳とアバターを交換します.このようにして,お互いに通帳かアバターを持ち合います.「アバターと通帳を交換する」というルールが守られれば,「自分がアバターを持っていれば,通帳は必ず相手が持っている」ことになります.
ア バターとしては,直感的に本物のシンボルであることが分かるものが適しています.最初,通帳のカラーコピーをとりましたが,本物の通帳を間違えられてしま いました.大きさ・模様・厚さが同じくらいで,白黒が良いでしょう.印鑑のアバターとしては,木の枝を印鑑くらいの長さに切ったものに印面を示す紙を貼り 付けたもの,を使っています.「貴重品預かり箱」と書いた箱を用意してもらい,そこにすべてのアバターを保管します.
このシステムの非常に良い点は,何を預けているかがいつでもすぐに確かめられることです.また,本物は手元になくても,それと同等と感じられるものがいつ も存在するので,安心感があるようです.この点は,預かりメモのような「情報」にはない特質と言えるでしょう.さらに,このやり方は分かりやすく,すぐに 理解してもらうことができました.
貴重品,お年寄りに限らず,個々のやり取りを分かりやすく記述し共有できるということは,複雑化した人と人との関係において非常に有益です.このようなア プローチはいろいろな場面で応用できそうに思います.そして,あの面倒だった複式簿記をやっていなければ,このアイデアは考えつかなかったと思います.面倒なことをやるといいことがあるようです.
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