Dunbar数

人類学者であるRobin Dunbar (1947-)は,著書 (Grooming, Gossip, and the Evolution of Language)の中で,非常にユニークな方法で,現在Dunbar's number と呼ばれる数を導き出している.最近話題となった,Andersonの"Free"という著書(2010)の中にも,このDunbar数が引用されている ところをみると,非常に一般化されてきた概念のようである.

Dunbarは,類人霊長類における Neocortex Ratio:新皮質比(新皮質容量/新皮質以外容量)と群れの規模の関係を調べた(下図参照.ref.1より引用).その結果,新皮質比が大きいほど,群れの大きさが多くなることが分かった.

時 間に対して群れの大きさをプロットすると以下のようになる(ref.1の図に注を付加).新皮質比が大きいほど,多くの個体と社会的定常状態を作ることが できる.高度の脳機能によって,より大きな社会活動が可能になることはreasonableである.霊長類の傾向を外挿すると,人間における群れの数は 150程度と推定される(これがDunbar数と呼ばれる).

更に興味深い傾向がある.群れが大きいほど,毛づくろいの時間が長くなるのである.例えば,

  • サル:約10%の時間
  • ゲラダひひ:約20%の時間

こ れは大きな群れを維持するために必要な行動と考えられる.人間においては,毛づくろいの時間は少ないが,Dunbarは,会話がそれに変わるものであると 指摘している.人々の会話を分析すると,その多くがGossipである.そのGossipは,対人関係における評価を含むため,人間関係性維持において, 非常に効果的な働きをしていると考えられる.

このDunbar説は,現代社会における対人関係性を考える上で,非常に重要な視点となる. ケータイに代表されるコミュニケーションメディアによる頻繁なやり取りは,毛づくろいを連想させる.コミュニケーションでは,なんらかの意味が伝達される (コミュニケーション論では,意味伝達過程と呼ぶ)と考えるこが多いが,毛づくろいのためであれば,特別な意味を持つメッセージを送る必要はない.我々が 明らかにしたように,ランプが光るだけの単純な刺激であっても,親しい関係人からのメッセージと想定するだけで,その刺激の印象は異なる.
http://acordo.jp/dp/sites/default/files/Cyber_Psychology2005_simplestimu...
つまり,社会性を保つためのコミュニケーションとしては,実に様々な形態が可能である.今後,様々な変化を遂げる可能性があるのではないだろうか.

も う一つの重要なポイントは,現代社会におけるDunbar数そのものの意味である.グローバルでコミュニケーションメディアが発達した社会においては, 人々はもっと多くの人たちと関係性を築くことが可能かもしれない.あるいは,人間内の情報処理系の限界はそうは変わらず,現代社会においても,コレボレー タや友達といった人は,実質的にはせいぜいDunbar数程度に限定されるのかもしれない.
近年の対人社会性の変化は,多くの場合,技術や社会インフラによって説明される場合が多いが,人間そのもの社会心理学的特質がその根底にあることは間違え ない.今後の社会形態・ライフスタイルを模索する上で,Dunbar数にまつわる考察が大変重要になってくるのではないだろうか.
卑近な例としては,facebook上の友達の数があげられるだろう.Dunbar数が厳格なものであるならば,友達の数は限定した方が良いかもしれな い.このようなネット社会でどれだけの数の人たちと,どのような関係性を構築できるのか,それがどう好ましいのか,また,どのような仕組みであれば,より 良い関係性が生まれるのか,そういった模索と考察が大きな意味をもつ.社会心理学的には,単純接触効果(Mere Exposure Effect),親密性平衡理論(Intimacy Equilibrium Model),認知的不協和(Cognitive Dissonance)などの良く知られている特質が,どのように本質的であるのか,また,ネット社会においてどう適応されていくのかが興味深い.

references:

  1. Robin Dunbar, Grooming, Gossip and the Evolution of Language, Harvard University Press. ISBN 0-674-36334-5.
  2. ロビン ダンバー, ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ, 松浦 俊輔, 服部 清美訳, 青土社, 1998/10, ISBN-10:4791756681/ISBN-13:978-4791756681.
  3. Chris Anderson, Free: How Today's Smartest Businesses Profit by Giving Something for Nothing, Hyperion Books, ISBN:978-1401310325.
  4. クリス・アンダーソン著,小林弘人監修・解説,高橋則明訳, NHK出版,ISBN978-4-14-081404-8.
  5. Mioko Ambe, Mikio Kamada, Masumi Ono, Toyohiko Shibata, A study of the impact of a simple stimulus on a receiver's imagination in mediated communication, CyberPsychology and Behavior, vol.8-5, 2005, pp.401-415.

key words:
Dunbar,ダンバー,群れ,毛づくろい,霊長類,communication, non-verbal

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